日本のユネスコ加盟70周年に際して
ユネスコは日本が戦後最初に加盟した国連機関であり、
2021年は日本のユネスコ加盟70周年にあたります。
教育、科学及び文化の協力と交流を通じた国際平和と人類の共通の福祉の促進を目的としたユネスコは、
平和を求める日本にとっての希望であり、
我が国は国内外において着実にユネスコ活動を広げてきました。
日本のユネスコ加盟
70周年に際して
ユネスコは日本が戦後最初に加盟した国連機関であり、2021年は日本のユネスコ加盟70周年にあたります。
教育、科学及び文化の協力と交流を通じた国際平和と人類の共通の福祉の促進を目的としたユネスコは、平和を求める日本にとっての希望であり、我が国は国内外において着実にユネスコ活動を広げてきました。
「コロナ禍の時代におけるユネスコの役割と期待」
日本ユネスコ国内委員会会長メッセージ
今コロナ禍の中で、人類社会は激動と混迷の中にある。COVID-19による多くの犠牲の中で、世界は苦悩し、経済は停滞し、社会は不安に揺れている。コロナ禍は、経済格差による国家間の分断、グローバリゼーションから一国主義への転換など、国際秩序の劇的変化を生み出すリスクを孕んでいる。更に、コロナ禍は、不況や大量失業など社会・経済構造の劇的変化を生み出すと共に、教育にも多くの弊害を生じ、おそらく長期にわたる影響を社会に残すであろう。経済的理由による退学、休校やキャンパス入構制限等による対面教育・教育機会の停滞や消失など、人材育成への影響は計り知れない。
他方、中・長期的には、コロナ禍はデジタルトランスフォーメーション(DX)を必然的に加速させ、ICT技術が幅広い社会活動の基盤となり、社会経済活動の在り方に根本的な変革をもたらすであろう。同時に、このDXによる変化は、今後教育現場にも大きな質的変革をもたらすと思われる。
コロナ禍の先には、果たしてどのような未来が、我々を待ち受けているのだろうか。今や人類社会は、感染症や自然災害、経済恐慌等が多発し、持続可能性が問われる時代となりつつある。今我々が体験しつつあるコロナ禍は、その端的な表象と言える。これらの困難を越え、人類社会が「誰一人取り残さないWell beingを実現する」には、何が求められているのだろうか。
「with コロナ」、あるいはポストコロナの世界を生きるうえでは、今後の世界を支える若者をはじめとして人々が物理的な隔たりを乗り越え無知・偏見をなくして相互に理解し、連帯・協調することが大切である。これによって、一人一人が安心・安全に暮らすことができる「人間の安全保障」が実現するのである。
今こそ「人の心の中に平和のとりで」を築き、人類の共通の福祉を促進し、持続可能な社会の構築を実現するというユネスコのミッションを改めて確認するべきである。今改めて、ユネスコには、教育、科学、文化、情報・コミュニケーションの各分野の視点を統合した新しい時代における新しい繋がりを構想し、提示する役割が求められる。
現在、ユネスコにおいては、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、世界各国の教育活動の状況を把握し、加盟国の教育大臣等に呼びかけ、ハイレベル会合を開催し各国の政策や好事例についての情報を共有するほか、他の国際機関と連携しつつ「学校再開ガイドライン」を作成し、ICT分野を含む民間企業の関与を得てグローバル教育連合といった構想を提唱するなど、コロナ禍の困難な状況への取組をリードしつつある。また、科学や文化の分野においても、オープンサイエンスのための国際協力等について認識を共有するための大臣会合や文化セクターの支援等に係るハイレベル会合を開催し、積極的な動きを見せている。
現在直面している未曾有の事態におけるユネスコの活発な活動やリーダーシップは、先に述べた国際機関の役割として果たしていくべきものであり、今後も事態の推移に応じた取組を経て、その成果を出すことが期待される。同時に、ユネスコにおいては、ユネスコ加盟国間の友好と相互理解の促進のため、また、こうした危機に応じて必要な対応を機動的・効果的に行われるようにするため、組織改革も含めたさらなる改革が進められるべきである。
ユネスコ加盟から70周年までの歩みとさらなる一歩
振り返れば、ユネスコは、戦後の荒廃の中で、日本が初めて加盟した国際機関である。戦後まもなく民間の自発的な活動として日本全国で広まった活発な民間におけるユネスコ活動等が加盟という形で実を結び、我が国の国際社会への本格的な復帰の端緒となったものといえる。ユネスコが掲げる「国際平和と人類の共通の福祉の促進」は、平和を求める日本国民にとっての希望であり、日本は国内外で着実にユネスコ活動を広げてきた。
その後、日本は高度経済成長を経て、ユネスコの枠組みの中でも「万人のための教育(Education for All)」への積極的な貢献等を通じて、途上国支援を行う立場へとなった。また、ヨハネスブルクサミット(2002)において「持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」を提唱し、持続可能な社会づくりのための担い手育成を日本はリードしてきた。
こうした中、今年、日本のユネスコ加盟70周年を迎える。また、国連海洋科学の10年のスタートや、ESD for 2030のキックオフ会合が予定されるなど節目の年となる。新しい時代のユネスコ活動へさらなる一歩を踏み出すために、また、持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向け、日本としても加盟70周年を契機として、国内のユネスコ活動の活性化に向けた取組を加速化させていく必要がある。日本は、2011年の東日本大震災をはじめとした多くの甚大な自然災害を経験しつつ発展を続け、今、人類が新型コロナ感染症に打ち勝った証として東京オリンピック・パラリンピックを実施しようとしている。ユネスコが、ポストコロナの新しい時代において、混沌とした世界に新たな方向性を示し、分断が危惧される世界をつなぎ直すという役割を効果的に実現できるよう、日本はリーダーシップを発揮し、これらに貢献すべきである。
日本は、さまざまな災害復旧に対する実績やサステナビリティ・サイエンスを活かし、ユネスコがポストコロナ時代における地球規模の課題に的確・迅速に対応するために貢献していくべきである。そして日本の知見や強みを生かし、信託基金等を効果的に活用しつつ、ユネスコが自らの改革を進め、SDGsの実現に向けて教育、科学、文化及び情報・コミュニケーションの各分野における諸々の活動を着実に実施するよう、官民の関係者が協力していく。例えば、グローバル教育連合などコロナ禍を契機にユネスコが主導的に行っている様々な取組についても、我が国関係者がしっかり関わっていくことが必要である。
さらに、加盟70周年の節目の年は、様々なステークホルダーに発信し、参画を得るための好機である。昨年10月のユネスコ国内委員会建議を踏まえ、特にこの「with コロナ」、あるいはポストコロナの時代を支える若者世代のネットワークを強化し、相互理解を図りながら、ESDの推進、「国連海洋科学の10年」に向けた活動の活性化、ユネスコ活動のメリットを活かした地域創生や多文化共生社会の構築、多様なステークホルダーの連携を深める戦略的なプラットフォームの構築などの取組の推進といった諸施策を、多様な層に積極的に働きかけつつ強力に実施していく予定である。
今ここに、ユネスコ憲章前文に述べられた「文化の広い普及と正義・自由・平和のための人類の教育とは、人類の尊厳に欠くことのできないものであり、且つ、すべての国民が相互の援助及びび相互の関心の精神をもって果さなければならない神聖な義務である。」との言葉を改めて思い起こし、ユネスコ国内委員会として決意を新たにしていくものである。
ユネスコと日本のあゆみ
History / 1945 – 2021
- 昭和20年
-
1945
連合国教育大臣会議・ユネスコ憲章採択
- 昭和21年
-
1946
ユネスコ憲章発効・ユネスコ創設
- 昭和22年
-
1947
仙台ユネスコ協力会発足(世界初の民間ユネスコ協会)
第1回ユネスコ運動全国大会開催
- 昭和23年
-
1948
日本ユネスコ協力会連盟結成(26年に日本ユネスコ協会連盟に改称)
- 昭和26年
-
1951
日本、ユネスコに加盟
- 昭和27年
-
1952
ユネスコ活動に関する法律公布、日本ユネスコ国内委員会設置
- 昭和28年
-
1953
ユネスコ協同学校(ユネスコスクール)事業(ASPnet)の開始
- 昭和36年
-
1961
政府間海洋学委員会(IOC)発足
- 昭和40年
-
1965
国際水文学10年計画(IHD)の開始
- 昭和42年
-
1967
ユネスコと連携した国立教育研究所のアジア地域教育協力事業の開始
- 昭和46年
-
1971
人間と生物圏(MAB)計画発足
財団法人ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)設立
- 昭和48年
-
1973
アジア・太平洋地域教育開発計画(APEID)発足
- 昭和50年
-
1975
国際水文学計画(IHP)発足
東南アジア基礎科学地域協力事業の開始(日本の信託基金による事業)
- 昭和54年
-
1979
IOC西太平洋地域小委員会(WESTPAC)発足
- 昭和59年
-
1984
米国脱退
- 昭和62年
-
1987
教育の完全普及に関するアジア・太平洋地域事業計画(APPEAL)発足
- 平成元年
-
1989
日本ユネスコ協会連盟による「世界寺子屋運動」の開始
- 平成2年
-
1990
万人のための教育(EFA)世界会議(ジョムティエン(タイ))
国際識字年日本、ユネスコに識字教育信託基金を設置
- 平成4年
-
1992
国連環境・開発会議(リオデジャネイロ(ブラジル)
日本、世界遺産条約加盟
- 平成5年
-
1993
日本から最初の世界遺産リスト登録(法隆寺・姫路城・屋久島・白神山地)
- 平成8年
-
1996
21世紀国際教育委員会報告書(ドロール報告書)公表
- 平成11年
-
1999
松浦晃一郎氏ユネスコ事務局長に就任
- 平成12年
-
2000
世界教育フォーラム(ダカール(セネガル))
国連ミレニアム・サミットミレニアム開発目標(MDGs)の設定
- 平成13年
-
2001
ユネスコ加盟50周年記念式典(東京)
- 平成14年
-
2002
持続可能な開発のための世界サミット(ヨハネスブルグ(南ア))
- 平成15年
-
2003
国連識字の10年、米国ユネスコ復帰
- 平成17年
-
2005
国連持続可能な開発のための教育の10年(DESD)
アジア太平洋地域開始式典(名古屋)
- 平成18年
-
2006
水災害リスクマネジメント国際センター(ICHRM)設立(つくば)
無形文化遺産条約発効、日本加盟
- 平成20年
-
2008
ESD国際フォーラム2008(東京)
- 平成21年
-
2009
持続可能な開発のための教育(ESD)世界大会(ボン)
第1回ユネスコスクール全国大会(東京)
- 平成23年
-
2011
アジア太平洋無形文化遺産研究センター(IRCI)の設立(堺)
- 平成26年
-
2014
持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議(名古屋、岡山)
(ユネスコスクール世界大会)
- 平成27年
-
2015
ESDに関するグローバル・アクション・プログラム(GAP)開始
持続可能な開発のための2030アジェンダ、国連持続可能な開発サミット(ニューヨーク)で採択
SDGsの設定 ユネスコ総会、教育2030行動枠組みを採択
- 平成28年
-
2016
日本のユネスコスクール1000校を超える
- 平成30年
-
2018
米国、イスラエル、ユネスコ脱退
- 令和2年
-
2020
持続可能な開発のための教育:SDGsの実現に向けて(ESD for 2030)の開始
- 令和3年
-
2021
持続可能な開発のための国連海洋科学の10年開始
日本、ユネスコ加盟70周年
ユネスコのこれから
Future
〜戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない〜