自然科学
科学を通じて物事の理解を深めることは、今日の私たちを取り巻く経済、社会、環境課題に適切に対応し、持続可能な社会を実現するために必要不可欠です。ユネスコでは、国際的な科学協力の枠組みを推進し、科学の発達や自然保護、さらには平和構築へ向けた様々な取組を進めています。
人間と生物圏(MAB)計画/生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)
人間と生物圏(MAB:Man and the Biosphere Programme)計画は、生物多様性の保護を目的に、1971年に開始した自然及び天然資源の持続可能な利用と保護に関する科学的研究を行う政府間共同事業で、生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)を指定する等、持続可能な自然と人間との共生を目指す活動を推進しています。生態系の保全と持続可能な利活用の調和を目的としており、保護・保全だけではなく自然と人間社会の共生に重点が置かれています。
ユネスコ世界ジオパーク
ユネスコ世界ジオパークは、国際的に価値のある地質遺産を保護し、そうした地質遺産がもたらした自然環境や地域の文化への理解を深め、科学研究や教育、地域振興等に活用することにより、自然と人間との共生及び持続可能な開発を実現することを目的とした事業です。ユネスコの国際地質科学ジオパーク計画(IGGP:International Geoscience and Geoparks Programme)の事業として実施されています。
政府間水文学計画(IHP)
政府間水文学計画(IHP:Intergovernmental Hydrogical Programme)は、国際協力による水資源の最適な管理のための科学的基盤の提供を目的に1975年に開始した政府間共同事業で、世界的観測網によるデータ収集、世界の水収支の解明、人間活動が水資源に与える影響の解明等に関する科学的及び教育的事業を実施しています。
政府間海洋学委員会(IOC)
政府間海洋学委員会(IOC: Intergovernmental Oceanographic Commission)は、1960年に設立された、ユネスコ傘下の海洋に関する包括的な政府間委員会で、海洋科学調査及び研究活動に係る唯一の国際機関として、一定の独立権能が与えられています。主な事業として、海洋観測・調査、海洋データの収集管理及び交換、津波早期警戒システムの構築、教育訓練、地域協力を実施しています。2021年に開始した「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年」※の提案主体であり、実施計画策定機関として様々な取組を推進しています。
※…持続可能な開発のための国連海洋科学の10年(2021-2030)
海洋科学の推進により、持続可能な開発目標(SDG14「海の豊かさを守ろう」等)を達成するため、2021年から2030年の10年間に集中的に取組を実施する国際枠組みとして、2017年12月の第72回国連総会で採択されました。ユネスコの政府間海洋学委員会(IOC)が実施計画策定機関となり、2018年から2年間の準備期間を経て、2020年12月に第75回国連総会で実施計画が感謝とともに留意された上で策定されています。実施計画では、10年間の取組で目指す社会的成果目標として、きれいな海、健全で回復力のある海、予測できる海、安全な海、持続的に収穫できる生産的な海、万人に開かれ誰もが平等に利用できる海、心揺さぶる魅力的な海の7つが掲げられており、そのために、海洋汚染の減少や海洋生態系の保全から、海洋リテラシーの向上と人類の行動変容まで10の挑戦課題に取り組むこととされています。