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ジオパークで「食」を味わう理由 ― ガストロノミーから見えるユネスコ世界ジオパークの魅力

はじめに

「ジオパーク」と聞いて、皆さんはどのような風景を思い浮かべるでしょうか。

雄大な山々や迫力ある断崖、火山や海岸など、特徴的な地形や地質をイメージする方が多いかもしれません。今回レポートするのは、そうした大地の成り立ちを、より身近な「食」からひもとくイベントです。

6月5日(金)~7日(日)、Mine秋吉台ユネスコ世界ジオパークの誕生と日本のユネスコ加盟75周年を記念し、特定非営利活動法人日本ジオパークネットワーク主催の「ジオパーク・食の祭典 ~地球を、味わい尽くす。~」が開催されました。

会場となった東京・KITTE地下1階のイベントスペースには、各地のジオパークが趣向を凝らしたブースを出展し、地域ならではの食や特産品を紹介。天井には地球儀が飾られ、「地球」をテーマとするジオパークらしい空間が演出される中、来場者は試食や出展者との会話を楽しみながら、各地域の魅力に触れていました。

(左)アンモナイトの化石を手に取る来場者/(右)ジオパーククイズの様子

大地が育む「地域の食」

そもそも、ジオパークで「食」とはどういうことなのでしょうか。

ユネスコ世界ジオパークは、貴重な地質や地形を保全するだけでなく、それらを教育や地域振興、持続可能な観光などに生かしながら地域の未来につなげていくことを目指すユネスコのプログラムです。その土地ならではの地質や地形は、土壌や水、気候を育み、農業や漁業、畜産業などの営みに大きな影響を与えています。そこに人々の暮らしや知恵が重なり、それぞれの地域ならではの食文化を育んできました。つまり、「食」は、その土地の自然環境と、人々の歴史や文化を映し出す存在でもあります。

イベントでは、全国のジオパークから集まった多彩な食の魅力が紹介され、それぞれの地域で受け継がれてきた「大地と暮らしの物語」を感じることができました。

北海道三笠市産のワインをご紹介くださったのは、三笠ジオパーク推進協議会事務局長の下村圭さんです。北海道三笠市は、約1億年前の白亜紀の地層が広がり、アンモナイトなどの化石が数多く見つかる地域です。一方で下村さんによると、1億年前の「蝦夷層群」から80~2,300年前の「川端層群」まで、地殻変動により三笠全域で地層が折れ曲がったことで、年代の異なる様々な地層や土壌の違いを生かした多様な品種のブドウ栽培も盛んだということです。イベントでは、赤白それぞれ2種の葡萄から醸造された試飲用ワインが振舞われ、三笠市の自然環境に思いを巡らせる来場者の様子も見られました。

三笠ジオパーク推進協議会の下村事務局長

ジオパークの魅力を伝える、イベントの舞台裏

イベントの背景や企画に込めた想い、実際に開催してみての手応えなど、このイベントを主催した日本ジオパークネットワーク事務局長の古澤加奈さんに、後日書面でお話を伺いました。

今回「ジオパーク・食の祭典」を開催するに至った背景や、企画の出発点について教えてください。特に「食」をテーマにした理由は何だったのでしょうか。

直接的なきっかけは、山口県の「Mine秋吉台ジオパーク」のユネスコ世界ジオパーク認定でした。このおめでたいニュースを記念し、久々に東京でPRイベントを開催しようという提案が理事会でまとまり、企画が動き出しました。テーマに「食」を選んだ背景には、近年の国際的な取り組みがあります。世界ジオパークネットワークでは2023年から「ジオパーク・ガストロノミー」のワーキンググループが発足し、日本からもその活動に参画し、最新情報の収集や発信に携わってきました。国際会議や研修会などで食と地質・風土のストーリーをテーマにすると、非常に大きな盛り上がりを見せるのを肌で感じていたのです。

「食」は年齢や地域を問わず、誰にとっても身近で共通の関心事です。大地が生み出した食文化を通じて伝えることで、ジオパークに馴染みがない方々にも直感的にその魅力を楽しんでいただけるのではないかと考え、今回のテーマに据えました。

篠田洋司 美祢市長によるご挨拶

企画立案から開催までの過程で、特に大切にされたことや、準備段階で印象に残っているエピソードがあればお聞かせください。また、出展内容や会場づくりにおいて意識された点はありますか。

正直なところ、開催決定から本番までの準備期間が非常に短く、怒涛のスケジュールで走り切ったというのが本音です。終わってみると「もっと時間があればこうできたのに」という反省点も尽きません。

特に試行錯誤したのが、KITTE地下1階という会場の独特なレイアウトをいかに生かすかという点でした。限られた準備時間の中で、会場担当者の方から過去の事例を伺ったり、同会場で開催されている他団体のイベントに直接足を運んで見学したりしてイメージを膨らませました。

何よりも「通りすがりの方が自然と立ち寄りたくなる仕掛け」と「会場内のスムーズな導線づくり」を意識しました。

工夫のひとつとして、会場の外からでも目を引くよう、会場内に地球儀バルーンやジオパークののぼり旗などを吊り下げました。通りすがりの方にも「何か面白そうなことをやっているな」と足をとめていただくための導線づくりを大切にしました。

会場担当者の方から過去の傾向や「やはり試食があると来場者の足を止めやすい」といった具体的なアドバイスをいただき、できる限り各出展地域と連携して試食をご用意できるようにしました。そうした試食コーナーを入口近くに配置し、まず「おいしそう」「楽しそう」という直感的なきっかけでエリア内に入っていただき、そこから奥のPR展示やトークステージへと自然に視線と足が向くような配置を心がけました。

当日の来場者の反応はいかがでしたか。試食やブースでの交流、ジオパーククイズなどを通じて、来場者の関心や理解に変化を感じる場面はありましたか。

3日間で約8,000人もの方々にご来場いただき、非常に大きな手ごたえを感じました。

東京駅のすぐ隣という会場の特性上、首都圏在住の方だけでなく、これから新幹線や電車で地元へ帰られる方が乗車前に立ち寄ってくださったり、海外からの観光客が興味深くブースを覗いてくださったりと、非常に幅広い層の方々と交流することができました。

会場で実施したシールアンケートでは「ジオパークを知らない」という回答が少し上回る結果となりましたが、これこそがまさにねらい通りでした。お住まいの地域にジオパークがある方は比較的認知度が高い一方で、馴染みのない地域の方にはまだ知られていないという実態も分かりました。だからこそ、そうした「まだ知らない方々」に知っていただく機会になったと感じています。

中には「ジオパークと食って、何か関係があるの?」と問いかけてくださる方もいらっしゃいました。そうした疑問を持つ方にこそ、試食やブースでの対話を通じて「実は大地の成り立ちと食文化には深い繋がりがある」というストーリーをお伝えし、気づきと驚きを楽しんでいただくことができました。「食べる」という身近な体験をきっかけに、大地と暮らしの物語へ関心を広げていただけたことが、今回の大きな成果です。

来場者アンケート「ジオパークって知ってますか?」

食はジオパークを知る「入口」

ジオパークというと、「専門的で難しそう」という印象を持つ人も少なくありません。一方で、「食」は誰にとっても身近な存在です。

地域の名産品を味わったり、その土地ならではの料理を楽しんだりすることをきっかけに、「なぜこの地域ではこの食文化が育まれたのだろう」と興味を持つ人もいるかと思います。その問いをたどっていくと、地形や地質、自然環境、そして人々の暮らしへとつながっていきます。今回のイベントは、ジオパークの魅力を「見る」だけでなく、「味わう」という新たな視点から伝える取組でした。

食をきっかけに地域の大地に思いを巡らせること。それは、ジオパークの価値を知る第一歩であり、地域の自然、文化、産業を未来につなぐユネスコ活動の広がりに触れる第一歩でもあると感じました。

ユネスコ未来共創プラットフォームでは、ジオパークに関するさまざまなコラムを公開してきました。コラムの舞台となったジオパークも糸魚川、銚子、阿蘇、下北、十勝岳、室戸とさまざまです。ぜひ下記リンクからお楽しみください!
https://unesco-sdgs.mext.go.jp/column_tag/geoparks

 

DATA
イベント名

ジオパーク・食の祭典 ~地球を、味わい尽くす。~

開催日時

2026年6月5日(金)~7日(日)

会場

KITTE地下1階 東京シティアイ パフォーマンスゾーン(東京都千代田区)

執筆

ユネスコ未来共創プラットフォーム事務局

取材協力

特定非営利活動法人日本ジオパークネットワーク

参考

開催案内
東京シティアイ イベントページ

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