UNESCO WEEK 2024 ユースフォーラムは、次世代ユネスコ国内委員会が主導し、2024年1月 21日(日)に国立オリンピック記念青少年総合センターを会場に開催されました。ユネスコ活動を通じて気候変動に取り組んでいるユース世代の分野横断的な出会いの場をつくるとともに、多様なユース世代の気候変動に対する関心の向上・促進を目指しました。
今回のテーマは 「ユースによる『未来への宣言』〜ユネスコ活動から考える気候変動〜」でした。このテーマに沿って8月から5ヶ月間、オンラインミーティングを通じてユースフォーラムの企画作成等に取り組んできました。
長い準備期間を経てたどり着いた本番当日、今までオンラインでしか会ったことのない次世代ユネスコ国内委員会のメンバーとも初めて対面で会うことができて感動しました。また、委員として企画当初から実施まで携わった身として、このイベントをユース世代のためになるように成功させたいと強く思いました。
本ユースフォーラムの内容としては、次世代ユネスコ国内委員によるユネスコ本部におけるユースフォーラム参加報告、パネルディスカッション「ユース世代の気候変動問題解決への貢献について―ユネスコとの関わりをテーマに―」、教育、科学、文化に分かれた分科会、高島崚輔氏(芦屋市長)による基調講演、そして『未来への宣言』策定に向けたワークショップ・グループディスカッションなどがありました。これらの中でも特に白熱したのは、各分科会と、ワークショップ・グループディスカッションの二つのセッションでした。
パネルディスカッションの中では、「次の日生きるか死ぬかという人たちがUNESCO の気候変動とかリサイクルとかそんな話していられない」という発言があったことが印象的でした。私たちが今どこに立って話をしているのかということを再認識させてくれました。
各分科会は、教育、科学、文化にそれぞれ分かれて行いました。
筆者が参加した教育分科会では、パネリストの自由の森学園の高校生・先生の話を聞くことができ、若者の活動力やアイデア、創造性には可能性がたくさんあると感じました。一方で、「対応する時間がない」「生徒だからできることにも限りがあるだろう」といった、大人側が意識的または無意識的に設定する様々な制約が、若者の活動の障壁になっている部分もあると思います。他方、先生がおっしゃられていたように、高校生を含むユース世代は政治的発言力と指揮する力の欠如に直面することもあると考えます。それをうまくサポートもしくは一緒に取り組んでいけるような場所づくりが学校でできると良いと感じました。
また、かつては社会の変化、変革にどのように対応するかに焦点が置かれた学校教育だったのに対し、 今は、変革を起こす側に立つことを視野に入れた教育が導入されていると聞きました。 何か生徒達が行動し、それが成功した時に自信を得て次のアクションにつながるということも話されていました。しかし、生徒のちょっとしたつまずきを失敗として評価する学校教育や環境が自信を失わせてしまうかもしれません。そこでどう先生がフォローアップできるかがもう一つ大切なポイントであるように感じました。
最後に、 アウトプットする場所が欲しいという意見がありました。アウトプットする場所として図書館や博物館、公民館などの地域コミュニティが挙がりました。資金や場所、身体的状態等人それぞれアビリティやアクセシビリティが異なると思うので、いかに学校の教室内外でもアウトプットできる環境をつくれるかということも ESDの実践において重要なポイントだと思いました。
教育分科会パネリストの方々のご感想
小林 誠道 氏(Climate Youth Japan)
ユースフォーラムに登壇してみての感想
環境問題に関するイベントは、ワンイシューに絞るか、複数の問題を同時に話し合うことが多いものの、今回は分科会という形でいくつかの課題が全体の中で話された点は比較的新しい試み、かつ有意義だったのではないか。司会進行、オンラインとの接続も非常にスムーズで、参加者にも良い印象を与えられていると推察する。
一方でESDという議題の難しさを体感した。
教育という一大テーマ故、個々の経験といったパーソナルな立場に立った言及よりも巨視的な指摘が多くなりがちだ。こうした発言は一定の「答え」に繋がりやすく、そもそもESDが世に浸透していない、学生が意義と効果を十分体験できていないという前提の問題意識に対してディスカッションに踏み込む前に議論が終了してしまう。例えば、現在高校生がどのように感じているのか、また彼らが大人や教育に対して抱いている思いが(大半の若者は何も感じていない、という可能性を持ちつつも)、既往知見とぶつかることで、新たな化学反応が期待できるだろう。
私個人としては、事前の話し合いで期待されたほどのパフォーマンスを発揮できなかったことが悔やまれる。次回がもしあれば、より入念に準備し、参加したい。
参加者や読者へのメッセージ
ESDの問題は、教育、持続可能性という大テーマをまたがり、かつ実効性、実現性、教育の効果性という問題が並立する難しい課題だと言える。さらに、事実上今現在教育を受ける子どもたちに適用しなければ、2030年、2050年といった時間的指標において、持続可能性を高める効果が期待できない。一刻も早く取り組まなければならず、かつ影響が長期間にわたりかねないのは気候変動問題と同程度とも言えるだろう。
加えて「世代を超えた関係性」そのものに対するパラダイムシフトが起こりつつあり、教育はその変化に多大な影響を受ける。
今回のような議論を通して、教育的にも、持続可能な社会にも貢献する実践的な活動が社会全体へ広がることを期待する。
森 朋子 氏(東京都市大学環境学部 准教授)
ユースフォーラムに登壇してみての感想
参加者の皆さん(ユースも、そうでない方も)がとても熱心に参加されているのが印象的でした。登壇する側としても聞いてくださる皆さんの熱量が伝わってきましたので、頑張らねば!と奮起しました。せっかく良いイベントでしたので、より多くのユースが参加できるよう、次回以降は自分の大学内でも広報をしたいと思います。
参加者や読者へのメッセージ
気候変動などのグローバルな社会問題は、考えるだけで気が滅入りますし、あまりに複雑でゴールが遠く感じられるかもしれません。そんな中でも「なんとかしよう」と立ち上がれる人は、それだけですごいと思います。継続の鍵は、ステップアップ型で身近なゴールをたくさん設定すること、それから多くの仲間とつながることです。皆さんは1人ではありません。ともにがんばりましょう!
鬼沢 真之 氏(自由の森学園中学校・高等学校理事長)
ユネスコ関係のイベントに久々に顔を出しました。
分科会でも発言しましたが、社会を変える・新しい社会をつくるというメッセージが新鮮でした。
日本社会が行き詰まり、若者も保守化しているとよく言われます。そのような中で、ユースフォーラムが、アクティブなメッセージを発信する意義は大きいと思いました。ちょこっと環境配慮をするだけで「やってる」感を押し出してくるこの状況を本質的に転換しないと、気候変動問題は解決できないと私は思っています。
ワークショップ・グループディスカッションでは、様々な意見を同じユースから聞くことができ、とても興味深い話し合いの場となりました。最後に教育、科学、文化に分類された付箋のそれぞれの数の傾向から、比較的多くの人々が教育に関心を寄せていることがわかりました。自分の専攻に関係なく、教育はだれもが経験してきたこと、経験していることであるためだと思います。また、教育と一言で言っても、若い世代だけで終わらないのが教育の魅力の一つです。
一方で、「一つのトピックにとどまらず交差性を教育の中にも取り入れていくべきだ」という話の後で行ったアクティビティであるにも関わらず、科学と文化についての付箋が少なかったことを考えると、やはりまだ単一的なものの見方に頼る傾向にあると感じました。一つ課題が浮き彫りになったのではないかと思います。
イベント全体として、大人、子どもといった二項対立ではなく、ユネスコ、気候変動、 教育、どの分野においても、双方、また他者とのコラボレーションが大切であると感じました。私たちが過ごしている社会は一握りの重要人物が担っているのではなく、私たち一人一人によって動いているということを忘れてはいけないと思います。また、子ども・ユース世代が大人とコラボレーションできる機会をどうやったら創出できるのか、私たち次世代ユネスコ国内委員会でも考えていく必要があると感じさせられました。
DATA
イベント名 | UNESCO WEEK 2024ユースフォーラム「ユースによる『未来への宣言』〜ユネスコ活動から考える気候変動〜」 |
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日時 | 2024年1月 21日(日) |
場所 | 国立オリンピック記念青少年総合センター |
執筆 | 次世代ユネスコ国内委員(2024年1月現在)川上寛人 |