大分県臼杵市(ユネスコ食文化創造都市)出身、次世代ユネスコ国内委員の佐藤世壱です。今回は、神奈川県から青森県下北半島までヒッチハイクで旅をし、2024年8月29日〜9月1日「第14回日本ジオパーク全国大会〜ジオパークでつながる 海 大地 未来〜」に参加してきました。この経験を通じて得た感動や発見を、皆さんにお伝えしたいと思います!
今と過去が繋がるジオパーク
私たちが生きているこの日本列島は、何億年、何千万年という地球の壮大な営みの中で形づくられてきました。目の前に広がる景色、その一瞬一瞬が、遥か昔の地球と深く繋がっているのです!この思いを強く感じたのが、今回訪れた下北半島のジオパークでした。
日本列島には、地質の多様性に恵まれた47地域の日本ジオパーク(その内、ユネスコ世界ジオパーク10地域※2024年10月現在)があります。それぞれのジオパークは、地域の風景や自然、文化を未来へと繋げるために、その価値を守り続けています。私たちが今、この地球に刻む一歩一歩が、未来の地層となり、その痕跡が後世へと伝わっていくのです。この地球の歴史の一部を担う責任を、私たちは自覚しなければなりません。
そして、本州最北端に位置する青森県下北半島。その独特な、まさかりの形をした地形は、太平洋、津軽海峡、陸奥湾という三つの海に囲まれ、豊かな恵みを私たちにもたらしてくれています。その中で育まれた暮らしが、下北半島のジオパークにどのように反映されているのか、今回の大会を通じて見つめ直す機会となりました。
水の惑星を守るために――ジオパークと共に築く海:「わたしたちの海」パネルディスカッション(8月29日)
「わたしたちの海」パネルディスカッションでは、海の未来を守るためにどのような取り組みが必要か、熱い議論が交わされました。特に「30by30」という目標に焦点が当てられ、その重要性が深く掘り下げられました。
「30by30」とは何か?
「30by30(サーティ・バイ・サーティ)目標」とは、2030年までに地球上の陸地と海の30%以上を健全な生態系として保全しようとする目標です。この目標は、2022年12月に採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の一部として掲げられ、2030年までにネイチャーポジティブ(自然を回復軌道に乗せ、生物多様性の損失を止めて反転させること)を実現するための重要なステップとされています。
ジオパークと「30by30」の関係性
ジオパークは、地質遺産の保護を通じてその土地の生態系を守る役割を果たしています。このディスカッションでは、各地のジオパークがどのようにネットワークを形成し、経験や知識を共有しながら、「30by30」目標達成に向けて協力し合うことの重要性が再確認されました。
このパネルディスカッションは、私たち一人ひとりが海を守るためにできることを考え直すきっかけとなり、未来の世代に豊かな自然を残すために、今何をすべきかを深く考えさせられる機会となりました。
自然と冒険で育む力(株)モンベル 辰野勇氏のメッセージ:基調講演(8月31日)
株式会社モンベル代表取締役会長 辰野勇氏による基調講演「夢と冒険 モンベル7つのミッション」に参加しました。
辰野氏は講演の冒頭で、「なぜ人は冒険をするのか」という問いを投げかけました。冒険とは何か、その定義を深く掘り下げ、チンパンジーやゴリラといった動物と人類との違いを「冒険をするかしないか」という観点で語られました。人類が進化の過程で培ってきた冒険心こそが、今日の私たちの生活を形作る原動力であると強調されていました。
特に、ユース世代へのメッセージとして辰野氏は、自然体験をすることの重要性を説かれていました。自然の中で得られる経験は、知恵、勇気、そして持続力といった「生きる力」を育むとし、それは教科書だけでは学べない価値ある力だとお話されました。困難に直面した時、こうした力がどれほど役立つかを実感するだろうとも述べられ、子どもたちが自然の中で遊び、学び、成長できる環境や仕組みを整えることの重要性についても触れられていました。
辰野氏の講演は、参加者全員に「冒険とは何か」「私たちの未来をどう切り拓くか」という大きな問いを投げかけ、深い思索へと導くものでした。
大地の声を聴く――ジオパークでつながるユースたちの対話と発見:ユースセッション(8月31日〜9月1日)
ユースセッション「ユース世代で考える 地域と地球の未来」が開催されました。このセッションは、全国のジオパーク地域で地域課題に取り組む中学生、高校生、大学生が集い、対話を通じて地域や地球の未来を描く場です。鳥海山・飛鳥ジオパーク推進協議会の主任研究員である大野希一先生が2022年に立ち上げたこの取り組みも、今年で3回目を迎えました。今回は、下北、蔵王、鳥海山・飛鳥、山陰海岸、そして喜界島のジオパークで活動するユースたちが一堂に会しました。
セッションの中心となったのは、2日間にわたる下北のジオサイト巡りです。下風呂温泉郷、大間崎、恐山などのジオサイトには、地域を深く理解するためのミッションが用意されており、参加者たちはグループの仲間と協力しながら、それぞれミッションに挑戦しました。さらに、下北の海の恩恵や地域の特性を学ぶために、「ファミリーマートさとう」という地元に密着したお店を訪ね、食品にまつわるミッションにも取り組みました。
ミッション例(一部)
下風呂温泉郷
・レールの枕木の本数を数えよ!
・とある生き物のレース会場を探せ!
・温泉の湧き出る場所を探せ!
・電柱にいる生き物を探せ!
ファミリーマートさとう
・青森県ならではの魚介類を探せ!
・地元の商品とは異なるものを探せ!
・下北ジオパークのロゴマークを探せ!
今回のユースセッションの目的の一つは、日本各地のジオパークで活動するユース同士の絆を深め、ネットワークを構築することです。バスでの移動中やサイト巡り後のワークショップでは、互いのジオパークを紹介し合い、各地での取り組みを共有するなど、活発な交流が行われました。新たな友人と共に学び、共感し合うことで、ユースたちは地域と地球の未来に向けたビジョンを描き始めました。
まとめ――自然と共に歩む未来:ジオパークでの2泊3日の出会いと学び
この大会を通じて、自然に寄り添いながら、どのようにして未来の海や大地を守り、育んでいくかを深く考える機会を得ることができました。ユースセッションでは、日本各地のジオパークが取り組む独自の活動に触れ、その多様性と創造性には心から感動しました。そして、自分たちの地域だけではなく、各地のジオパークにも足を運び、そこに暮らす仲間たちと交流を深める機会を持てたことを誇りに思います。
やはり、現地でしか感じることができない空気、そこにしかない風景、そしてその場でしか生まれない絆があることを改めて実感しました。実際に現地を訪れ、一緒に過ごし、学び合えたことは何物にも代えがたい経験です。
この2泊3日のユースセッションを通じて出会った仲間たちが、新しい時代のジオパークの活性化に向けた中心となっていくことを確信しました。これからも、次世代ユネスコ国内委員会として、日本各地のユースとのつながりを広げ、深めていきたいと強く感じます。そして、そのネットワークが、未来の日本ジオパークを支える重要な基盤となることを目指していきたいと思います。
DATA
イベント名 | |
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開催日時 | 2024年8月29日〜9月1日 |
会場 | しもきた克雪ドーム (青森県むつ市真砂町8番8号) ほか |
執筆 | 次世代ユネスコ国内委員会委員(2024年9月現在)佐藤世壱 |