こんにちは。
大分県臼杵市(ユネスコ食文化創造都市)出身、次世代ユネスコ国内委員会委員の佐藤世壱です。

2024年11月2日(土)、京都府立京都学・歴彩館にて開催された「Green Blue Education Forum 2024」に参加し、「SDGs未来ディスカッション パートⅡ」のパネルディスカッションに登壇させていただきました。このフォーラムは、「体験の機会の場」研究機構が主催し、環境省が共催するイベントです。2019年から続き、今回で5年目を迎えました。「現代と未来のギャップを埋める」をテーマに、年齢や立場を超えた対話が行われました。

フォーラムの場には、どこか温かな空気が流れていました。「ここでは誰もが『学ぶ人』であり『教える人』でもある。大人も子どもも肩を並べ、互いの考えをじっくりと聞き合いながら、未来をより良くするための道を探る場」-そこには、何かを押しつけるのではなく、共に考え、歩もうとする姿勢がありました。私自身も、自らの取組を共有するとともに、全国から集まった多くの方々の視点に触れ、貴重な学びの機会を得ました。


もったいないから、お裾分けへ日本に根付く分かち合いの心

「SDGs未来パネルディスカッションⅠ」では、小学生や中学生、そして社会の第一線でご活躍される方々が一堂に会し、未来の社会について語り合いました。特に印象的だったのは、「環境問題の解決」ではなく、「より良い暮らしを築くこと」に意識を向ける重要性についての議論です。

「環境問題」という言葉を聞くと、私たちはつい「何かを減らす」「制限を設ける」といった発想に陥りがちなのかもしれません。しかし、本来目指すべきは、心豊かに生きること。その視点を持つことで、結果として環境への負担が減り、未来へと続く暮らしにつながるのではないか ―そんな気づきを得ました。

この話を伺いながら、日本語の「もったいない」という言葉の奥深さを改めて考えました。世界に広まったこの言葉ですが、日本にはさらに根源的な「お裾分け」という文化があります。

「もったいない」は「無駄にしない」という意識ですが、「お裾分け」は「余らせる」という発想すら持たず、自然と分かち合うということです。「分かち合うことで暮らしが豊かになる」という考え方は、単なる節約やリサイクルを超え、人と人とのつながりを生み出します。

また、開催地京都の龍安寺のつくばいに刻まれた禅の言葉、「吾唯足知(われ ただ たるを しる)」 も紹介されました。

「満ち足りることを知る」―それは、「足りないもの」を求めるのではなく、「今あるものを大切にする」という視点を持つこと。物質的な豊かさではなく、心の在り方こそが本当の豊かさをもたらすという、この禅の思想は、これからの時代にこそ必要な考え方ではないかと感じました。

環境問題という枠を超え、「より良い暮らしとは何か」を問い続けること。それが、人と自然の関係を見直し、未来へとつながる生き方をつくる鍵なのだと実感しました。

未来ディスカッションの様子


今、ここにあるものから始める~ユースの視点が生むアクション~

フォーラムの中でも特に熱を帯びたのが、ユースによるプレゼンテーションコンクール 「守り残したい環境・創りたい未来」でした。全国から選ばれた6チームが、それぞれの地域で培った知恵と経験をもとに、発表を行いました。

プレゼンコンクールでは、京都のチームがコーヒーの残渣を活用したキノコの栽培キットを発表し、愛知の高校生チームはミニトマトの生産と販売におけるデータ活用による食品ロス削減の取組を紹介しました。それぞれの発表を通して感じたのは、彼らが「未来の担い手」ではなく、すでに今この瞬間に「社会を動かしている存在」であるということでした。

彼らの取り組みには、共通する視点がありました。「足りないものを求める」のではなく、「今あるもの」に目を向け、そこから何ができるかを考える。その意識が、新たな価値を生み、社会を豊かにするのだと感じました。

ユースによるプレゼンテーションコンクール

私は、コンクール後の「SDGs未来パネルディスカッションⅡ」に登壇し、「大好きな地球のために私たちができること」をテーマにお話しをさせていただきました。中学時代に立ち上げた「臼杵市立西中学校学校林プロジェクト」についても紹介し、地域の自然を活かした学びの場づくりについて語りました。このプロジェクトは、地元の自然を身近に感じる機会の少なさに気づいたことがきっかけで始まり、今では、学校の総合学習の一環として活用され、学生が地域の自然と向き合う場となっています。

登壇の様子


語り合うことで生まれる社会

今回のフォーラムを通じて改めて感じたのは、「共創(Co-creation)」 の力です。世代や立場の違いを超え、それぞれの視点を持ち寄り、対話を通じて新たな気づきを得る。そこから生まれるのは、誰か一人のアイデアではなく、異なる考えが交わることで生まれる新しい道です。

ユース世代と大人世代が共に語り合う場があること。それ自体が、すでに「より良い社会」への一歩なのではないかと思います。私自身も、大人の方々の経験や考え方を学びながら、ユース世代の発表を受け、多くの刺激を受けました。こうした対話の場こそが、未来をつくる小さな種となっていくのだと実感しました。このフォーラムで得た学びを大切にしながら、「今ここでできること」に真摯に向き合っていきたいです。

DATA
イベント名

Green Blue Education Forum 2024

開催日時

2024年11月2日(土)

執筆

次世代ユネスコ国内委員会委員(2024年11月現在)佐藤世壱

記事をシェアする