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ユネスコ日本ユース・セミナー「科学でつなぐひと・社会・未来」開催報告

2026年1月12日(祝・月)、「ユネスコ日本ユース・セミナー」が都内会場とオンラインのハイブリッド形式で開催されました。全国の高校生や大学生を中心に53名の若者が参加し、科学の力による社会課題の解決について考えた1日をレポートします。

科学コミュニケーションで社会貢献

はじめに、今回のセミナーの講師である手作り科学館 Exedra 館長の羽村太雅氏による講演が行われました。

冒頭、羽村氏は「地球外生命体を手のひらに乗せたい」という思いから科学に興味を持った原点を語りました。その根底にあるのは、未知の存在を自らの手で確かめたいという探究心です。その思いはやがて、専門家に限らず誰もが科学に触れられる場をつくりたいという志へと広がり、「柏の葉サイエンスエデュケーションラボ」の設立や「手作り科学館 Exedra」の立ち上げへとつながりました。現在は、科学コミュニケーションを軸に、地域交流の活性化に取り組んでいます。

「手作り科学館 Exedra」では、野生・外来動物と人間との摩擦というデリケートなテーマも扱っています。「捕まえた動物をどうするべきか」「駆除は本当に必要なのか」と市民に問いかけながら、「駆除しなくてよい未来の実現」に向けて、科学の現状を伝え、考えるきっかけを生み出しています。また、駆除された動物を単に消費するのではなく、普及啓発のための教材として活用することで、生態への理解を深めるとともに、対話の促進や、課題解決をともに考える機会を創出しています。

科学コミュニケーションを通じて、見えにくい社会課題をわかりやすく伝え、対話や学びの場を生み出しており、科学が人や社会、未来をつなぐ力を持っているのだということを感じました。そして、ひとつの正解を求めるのではなく、問い続け、関わり続けることの大切さを、参加者一人一人が考える機会となりました。

【質疑応答(一部)】

Q.多様な科学の現場を見せる活動をされていますが、理系人材を増やすことでどんな未来を実現したいですか?

A.ガリレオ、ニュートン、アインシュタインは、その時代のトップクラスの大天才ですが、彼らよりも皆さんのほうが色んなことを知っています。それは、皆さんの方が後に生まれてきたからです。昔と比べて、それだけ世界のことがわかるようになり、皆さんは世界の最先端を見ることができる時代を生きていますが、まだわからないこともたくさんあります。研究をする人が増えれば増えるほど、人類が知りうる世界は広がっていくので、そんな世界を広げる取り組みに参画してくれる人がもっと増えたらいいなと思いますし、その結果、何百年後の世界が今よりもっと良い世界になってくれたらいいなと思います。

Q.害獣を駆除しなくてもすむ未来実現するために、AIをはじめ、未来の技術を利用する方法を考えていたら、教えてください。

A.未来の技術は活用できたらいいなと常に思います。ただ未来にどんな技術が生まれてくるのか、今の時点ではわからないことも多いので、あまり期待しすぎないようにしています。AIは、自分の専門外のことについて活用していますが、AIを活用するのと同時に、今できることをやっていくことが大事だと思っています。

ユネスコ活動とユースの役割

続いて、次世代ユネスコ国内委員会副委員長の谷垣徹氏が登壇し、ユネスコの理念や国内における教育・科学・文化の各活動内容について紹介しました。

ユネスコの中期戦略では、ユースは単なる支援対象ではなく、共に未来を創るパートナーと位置づけられています。

谷垣氏は「ユネスコという名前を使用していなくても、より良い社会の実現に向けて自ら考え行動している点で、皆さんの活動もまたユネスコ活動の一環であると言えます。若者の持つアイデアと行動力で共に未来を創り、平和を築いていきましょう」と力強く呼びかけました。

学問知と経験知をつなぐナレッジブローカー

続いて、奈良教育大学准教授の河野晋也氏が登壇し、羽村氏の取り組みとユネスコ活動を結びつけながらワークショップを行いました。野生・外来動物の問題は、自然科学の領域にとどまらず、教育や文化、社会の仕組みとも深く関わっており、科学は知識として学ぶだけでなく、社会課題と結びつきながら活かされていくものではないかと語られました。

その中で紹介されたのが「ナレッジブローカー」という考え方です。研究で得た知見(学問知)と、現場で培われる知見(経験知)をつなぐ役割を指し、羽村氏が科学コミュニケーターとして科学と地域を結びつけている活動は、その具体例といえます。

河野氏は知識を得るだけでは人の行動は変わらないと話し、体験を通して実感することの大切さに触れました。そして、その知識と経験を結びつけ、自分の言葉で伝えていくことが重要だと語りました。

特に若い世代は、デジタルを使いこなし、学校や地域など複数の場を行き来できる強みを持っています。ユースは、支えられる存在にとどまらず、社会を変化させていく担い手でもあります。そうした中で、自分の学びや経験をつなぎ、周りに伝えていくナレッジブローカーとして行動していくことの大切さが語られました。

まとめ

本セミナーは、科学と社会のつながりを考え、自分に何ができるのかを見つめ直す機会となりました。

私自身の歩みを振り返ると、かつては自然の保全や種の保全そのものに強い関心を抱いていました。しかし、人間がその土地に関わって生活文化を築いている以上、真の意味で守るためには人ありきの自然保全が必要なのではないか。そう感じ始めていた時に、大学の恩師のおかげで出会ったのが、自然と人の共生をテーマとしたユネスコエコパークでした。それは、私が考えていた自然保全と、自然を持続的に活用する人々の文化や生活の保全を両立させ、自然を守りながらも文化の発展や持続可能な経済発展を目指すという、まさに目指すべき道でした。

この現場での実践を通じ、私は「科学」の必要性を強く実感しています。特に人と人の間に生まれる「社会科学」は極めて重要です。地域に根付く文化やコミュニティ、伝統知や在来知は、人々が自然を絶やすことなく持続的に利用するプロセスで生まれた知恵であり、それはその地域の「自然科学」を支える不可欠な要素でもあります。

自然科学は自然の実態を事実ベースで分析し、データとして扱います。しかし、人が自然ありきの生活をしている以上、この自然科学の正しさと、生活文化や伝統、精神的な側面、そしてコミュニティの合意形成といった、経験知ベースの実態である社会科学がうまくバランスを取りながら、相互作用・相互理解を深めることが、持続可能な社会のためには何より重要です。

そこには、ユネスコエコパークという「共有認識」や「目標」が存在します。私は、自然科学と社会科学が互いに理解し合えるようにする通訳者、すなわち「インタプリター」のような存在としての「ナレッジブローカー」でありたい。学びと経験をつなぎ、それを誰かに伝えていく。これからの社会を担うユースの一人として、私自身も自分の立場で、この役割を果たしていきたいと感じました。

DATA
イベント名

ユネスコ日本ユース・セミナー「科学でつなぐひと・社会・未来」

日時

2026年1月12日(祝・月)

場所

ビジョンセンター東京 京橋 & オンライン

主催

文部科学省/日本ユネスコ国内委員会/公益財団法人五井平和財団

企画

次世代ユネスコ国内委員会

協力

公益財団法人日本ユースリーダー協会

執筆

次世代ユネスコ国内委員会委員(2026年4月現在) 門田朔

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