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「今日、私はコンピューターに初めて触れ、自分の人生の新しい章と新しい夢が始まったように感じました。」 「寺子屋に行って、先生になりたいと思うようになった。」 「私たちにとって当たり前で、時にはテストに追われて辛いと感じる『学ぶ』という行為は、単なる知識の習得ではなく、自分の夢をつかむための手段なのだと改めて考えさせられました。」 「今回の体験は、私の夢を単なるあこがれから『確固たる使命感』へと昇華させてくれました。」 |
(公社)日本ユネスコ協会連盟は、(公財)かめのり財団と共催で、高校生を対象とした「高校生カンボジアスタディツアー」※1を実施しています。本ツアーでは、カンボジア現地の人々との交流や国際協力の現場を訪問することを通して、教育・文化継承の重要性や平和の大切さを学び、ツアー後も地球規模のさまざまな課題について考え、行動していく人材を育てることを目的としています。
本コラムでは、当連盟が1989年から実施している「世界寺子屋運動」※2の現場を訪問した際の様子と、ツアー終了後の参加者たちの活動を中心に紹介します。
「学ぶ」ことで広がる、子どもたちの未来
第10回目となる2026年度は、2026年5月に開所したカンボジア24軒目の「ノーコー・ピア寺子屋」を訪問しました。寺子屋では、小学校(復学支援)クラス、中学校クラス(BEEP)※3、大人向けの識字クラスを見学し、小学校(復学支援)クラスと中学校クラス(BEEP)の学習者たちと、日本とカンボジア双方の伝統的な遊びを通して交流したほか、小学校クラスの学習者の自宅も訪問しました。
ノーコー・ピア寺子屋があるアンコール・チュム郡ノーコー・ピア町は、長く続いた内戦の影響に加え、貧困や教育機会の不足など、さまざまな課題を抱える地域です。小学校入学時の就学率は95%まで上がってきた一方で、中学校の就学率は約60%まで低下しており、学びを継続することの難しさが課題となっています。よって、小学校を中退してしまった子どもたちへの復学支援や識字教育などを通して学びの機会を提供しているほか、保健衛生教育や給食プログラム、職業訓練や人材育成などにも取り組み、地域全体の包括的な成長を目指しています。
ツアーに参加した高校生たち(以下、「参加者」)は、寺子屋学習者との交流の中で、「寺子屋に通って良かったこと」や「将来の夢」について尋ねました。学習者からは、「勉強ができて楽しい」「友達と会えることが嬉しい」「寺子屋に行って、先生になりたいと思うようになった」など、寺子屋に通ったことで生まれた前向きな変化についての声が聞かれました。実際に授業の様子を見学すると、学習者たちは音読やグループワーク、発表など、さまざまな授業に積極的に参加していました。「勉強ができて楽しい」という言葉どおり、学ぶことへの意欲が伝わってきます。また、「先生」だけでなく、「医者」「弁護士」「技術者」など、さまざまな将来の夢を語ってくれる学習者もいました。学びを中断せざるを得なかった子どもたちにとって、寺子屋は再び学ぶ機会を得るだけでなく、夢を持ち、将来の可能性を広げる大切な拠点になっていることを実感しました。参加者からも、「実際に学んでいる人たちと交流する中で、教育が子どもたちや大人に新しい可能性を与えていることを感じました。特に、学ぶことに前向きな子どもたちの姿から、教育が未来への希望につながっていると感じ、とても刺激を受けました」という感想が寄せられました。

小学校(復学支援)クラスの授業の様子。学習者たちの笑顔が印象的だった。
「夢がわからない」から考えた、もう一つの大切なこと
授業見学後は、カンボジアの伝統的な遊び(日本のハンカチ落としや棒引きに近い遊び)や尻尾取りゲーム、福笑いなどを通して交流しました。参加者たちは、簡単なクメール語とジェスチャーを使いながら、一生懸命コミュニケーションを取ろうとしました。寺子屋学習者もクメール語を教えてくれたり、ジェスチャーで返してくれたりするなど、互いに工夫しながら交流を深めました。そのうちに、一緒に写真を撮ったり、ハグをしたりする姿も見られました。
その中でも特に仲良くなったのが、中学校クラス(BEEP)に通う17歳の女の子でした。ある参加者が「将来の夢をクメール語で書いてほしい」とノートを差し出したところ、返ってきたのは「夢がわからないから書けない」という言葉でした。その場にいた参加者たちは戸惑いながらも、通訳ガイドを介して話を聞きました。すると、「寺子屋で勉強することは好きだが、自分が将来どうなるかわからない」「身近にロールモデルとなる大人が少なく、知っている職業も少ない」ということがわかりました。
学ぶ機会を得ることは、未来の可能性を広げる大切な一歩です。一方で、さまざまな生き方や職業を知り、「自分もこうなりたい」と思える人に出会うことがなければ、具体的な夢を描くことは難しいのかもしれません。この出会いは、参加者たちに「学ぶ機会を提供すること」だけではなく、「さまざまな生き方を知る機会をつくること」の大切さにも気づかせました。参加者からは、「今回の訪問を通して、子どもたちに学ぶ機会を提供するだけでなく、さまざまな生き方や職業を知り、『自分もこうなりたい』と思えるきっかけを与えることも大切なのだと学んだ」という感想が寄せられました。

(左)仲良く写真撮影する様子/(右)福笑いを体験してもらう様子
カンボジアでの出会いから、自分自身の未来を考える
寺子屋訪問をはじめ、ツアーを通してカンボジアが抱える前向きな変化と課題の両方を目の当たりにした参加者たちは、改めて教育の大切さを考えると同時に、自分自身の将来についても、ツアー参加前より深く考えるようになりました。ツアー終了後には、「この訪問を通して、子どもたちがより良い環境で学び、生活できるように、自分も何か行動したいという気持ちが強くなりました」「『まだ高校生だから』ではなく、『高校生だからこそできること』を探し、考え、行動する。今回のカンボジアでの経験を一度きりの思い出で終わらせるのではなく、これからの事後活動を通して、自分なりの形で国際協力につなげていきたいと思います」といった声が聞かれました。現在、参加者10人全員が、ツアーで得た学びを一度きりの経験で終わらせず、継続的な活動につなげられないかを考えています。また、個人でも、学校内外での発表や出前授業などを通して、ツアーで学んだことを周囲に伝え、還元するための活動に取り組んでいます。
受け継がれていく、学びと行動
こうした「学んで終わりにしない」という動きは、今回の参加者だけではありません。第8回(2024年度)の参加者たちは、寺子屋学習者の「サッカーを皆で楽しみたい」という希望をきっかけに、参加者10人全員で「GOAL」という団体を立ち上げました。ボールやユニフォームなどを回収し、寺子屋に届けることを目標に活動しているほか、各自が関心のあるテーマについて学びを深め、自身の夢の実現に向けて活動しています。第9回(2025年度)の参加者たちも、寺子屋で音楽や美術などの情操教育が不足していることに目を向け、クレヨンや色鉛筆などの画材を集めて寺子屋に送る活動を行いました。また、個人でも団体を立ち上げたり、出前授業を行ったりするなど、それぞれの方法で活動を続けています。
寺子屋で学ぶ子どもたちが夢を描き、その姿に触れた高校生たちが自分自身の未来を考える。そして、高校生たちが起こした行動が、また誰かの学びや夢につながっていく。教育は、知識を身につけるためだけのものではありません。新しい世界を知り、自分の可能性に気づき、まだ見ぬ未来を思い描くためのきっかけにもなります。そして、一人が夢を描くことは、時に別の誰かが夢を描くきっかけにもなります。
カンボジアの寺子屋で生まれた夢。それを見つめた高校生たちの新たな夢。そして、その夢を胸に始まる一人ひとりの行動。小さな学びの場から生まれた変化は、次の誰かへと受け渡されながら、少しずつ広がっています。
一人ひとりの夢が、誰かの夢を支え、また新しい夢を生み出していく――。そんな「夢の循環」が、これからも世界のどこかで続いていくことを願っています。

ノーコー・ピア寺子屋にて集合写真
※1 高校生カンボジアスタディツアー:
2014年から実施(COVID19の影響で2020年度は中止、2020年度から2023年度まではオンラインでの実施)しており、対象はユネスコスクールに通う高校生、または地域のユネスコ協会から推薦を受けた高校生。行き先は、在日本国大使館、UNESCOプノンペン事務所、トゥール・スレン虐殺博物館、チュンエク虐殺センター、アンコール小児病院、アンコール遺跡群、日本ユネスコ協会連盟カンボジア事務所、寺子屋など。
※2 世界寺子屋運動:
当連盟が1989年に開始した運動で、基本的人権として、年齢、宗教、性別に関わらず全ての人が公平に教育の機会を得られるように、無償で学ぶ機会を応援するもの。詳細はこちら
※3 中学校クラス(BEEP)
カンボジア政府とUNESCOが協力し、14歳以上の中学校中退者ないし小学校修了者を対象に、ITスキル教育と教育機会提供のために立ち上げたプログラム(BEEP:Basic Education Equivalency Program)。当連盟の寺子屋でも2022年から導入している。
DATA
| イベント名 | 10回高校生カンボジアスタディツアー |
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| 主催 | 公益社団法人日本ユネスコ協会連盟 |
| 共催 | 公益財団法人かめのり財団 |
| 開催期間 | 2026年7月26日~8月2日 |
| 執筆 | 公益社団法人日本ユネスコ協会連盟 柴田香里 |
| 参考 | 高校生カンボジアスタディツアーについて(外部サイト) |