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第8回ESD実践研究集会(2025年度国内RCE実務者会議・日本RCEユース会議)参加レポート

1.はじめに

次世代ユネスコ国内委員会委員として、第8回 ESD実践研究集会(2025年度 国内RCE実務者・日本RCEユース会議)に参加してまいりました。 本会議への参加は、当委員会の活動内容を広く共有するとともに、特に関西圏におけるユネスコ活動関連団体やステークホルダーとの強固なネットワークを構築することを主な目的としています。

本レポートでは、当委員会の川上寛人と谷垣徹の2名が、それぞれの専門的視点から各セッションの執筆を担当しました。現場の熱量とともに、そこでの学びと今後の展望を報告いたします。

参加した委員の集合写真

2.参加のモチベーションと目的

次世代ユネスコ国内委員会の谷垣徹です。私自身学生時代にESDに出会い、ESDに関する活動に10年以上関わってきました。これまでは出身大学である奈良教育大学を拠点に、ユネスコスクール等の学校教育におけるESDを中心に活動してきましたが、地域拠点であるRCE関連の活動に関わる機会はあまりありませんでした。今回、次世代ユネスコ国内委員としてRCE関連の会議に参加する機会をいただいたので、RCE兵庫-神戸をはじめとする国内RCE実務者の皆様や、日本各地のRCEの活動に関わるユースの皆様と繋がることを重視しました。自分自身のESD活動のネットワークをより一層広げることが、今回の会議の大きな参加目的です。(谷垣)

入口の様子

3.基調講演「ESDのロマン」― 松岡広路 氏

神戸大学教授(2026年3月当時)の松岡広路氏による基調講演「ESDのロマン」では、これからのESDを考える上で「当事者性」「For(~のための)が重要」「ネットワーキング」というキーワードが提示されました。

【当事者性と知の交差】

まず「当事者性」については、「当事者」であることと「当事者性」を持つことは別の意味として捉える必要があり、この場においては後者の「当事者性」こそが重要であるとおっしゃっていました。 多様な当事者性を持つ人々が知を交差させ、関わり合っていく中で、人(個・集団・コミュニティ)の学びが有機的なかたまりとなって生まれる「ネットワーキング」の重要性が強調されました。

【「For(〜のための)」が持つ意味】

「持続可能な開発」という理念の意味づけがゆらぐ中で、改めて Education “for”Sustainable Development (持続可能な開発“のための”教育)という言葉の重みについて議論が交わされました。ESDの基盤となる、持続可能性に関する歴史的変遷とともに、その本質を探っていきます。

『Our Common Future』(1987)における定義
「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」と提唱されました。経済成長の復活とその質の転換、貧困層の基本的なニーズの充足、そして地球規模の環境問題の解決を不可欠なものとして捉え、それらを同時に目指す姿勢が示されています。

DESD「国連ESDの10年」(2005〜2014)と解釈のゆらぎ
理念が普及する一方で、ESDをめぐる解釈にも「ゆらぎ」が生じました。その過程で、以下の視点が示されました。

・「For」重要性への立ち返り
2009年の第3回ESD国際会議において、国連大学元総長のハンス・ファン・ヒンケル氏が強調した視点です。「持続可能な社会を創る」という明確な目的意識を持つ「For」の重要性を、あえて再定義せざるを得ない状況があったことが語られました。
・言葉への理解と関係性
「持続可能な開発」という難解な概念を理解する必要性や、環境教育(Environmental Education: EE)とESDの相違点と、関係性について問われました。
・「on(〜に関する)」や「of(〜の)」の視点
「For」だけでなく、知識としての「on」や、持続可能性そのものを対象とする「of」という多角的な視点が同時に必要であるという意見が示されました。

単なる知識の習得(About)に留まらず、持続可能な社会を創る「ために」何ができるか。このような目的意識を共有することの重要性を再認識する機会となりました。(川上)

基調講演の様子

 4ESD・RCE リレートーク:ポスターセッション

ESD・RCEリレートークでは、AとBの2つのブロックに分かれ、総勢49の団体・個人による発表がありました。一般的なポスターセッションとは異なり、冒頭に各発表者が3分以内で活動や研究についてマイクを繋いでいく「リレートーク」形式で展開され、ESD・RCEに関する幅広い活動や研究について見聞を深めることができました。活動や研究の内容に関する紹介だけでなく、それぞれの発表者が何を目指し、どのような思いで活動に取り組んでいるのか語られ、参加者同士がストーリーを通して繋がっていくのが印象的でした。我々次世代ユネスコ国内委員会の活動についても多くの方が関心を持ってくださり、ESD・ユネスコ活動に取り組むユース世代のネットワーク構築に繋がったのではないかと思います。(谷垣)

ESD・RCE リレートークの様子

5.ESD企画づくりワークショップ

実務者とユースが混合で企画を立案する本ワークショップにおいて、私のグループでは「2週間のこどもキャンプ」をテーマに議論を深めました。

この企画の最大の特徴は、運営側が細かなプログラムをすべて決めてしまうのではなく、あえて「活動の枠組み(プラットフォーム)」のみを用意する点にあります。この枠組みの中で、参画する大学生たちが自らの関心や専門性を活かして主体的にコンテンツを企画し、参加する子どもたちがその多様な企画内容の中から自ら選択し参加を決める、という循環の構築を目指しました。

これは「教える側・教えられる側」という固定化された関係性を超え、企画する大学生自身が当事者性を持ち、子どもたちと共に学びを創り上げていく試みです。まさに基調講演で語られた「当事者性」と「知の交差」を体現するような、自由度の高いESDの実践の形について、活発な意見交換が行われました。(川上)

6.総合シンポジウム・討議

「交差する知と実践〜ユース・実践者・研究者が描くESDのこれから〜」と題されたシンポジウムでは、今後のESDの指針となる以下の7つのキーワードが抽出されました。

  • 尊重のもとの対話
  • 「待つ」ことの大切さ・勇気
  • 若者にしかできないこと
  • 脱・成果効率主義
  • 脱・競争社会
  • 市民としての当事者性
  • ステルスESD戦略

特に「尊重のもとの対話」について、私は委員の立場から「互いのバックグラウンドを尊重した上で、フラットに意見を交わせる土壌こそが、次世代のESDを加速させる」とのコメントを投げかけました。(川上)

 7.全体を通しての振り返り

2日間の全行程を終え、参加した両委員がそれぞれの視点から今回の会議を振り返ります。

◾️川上:実務者とユースの知の交差から生まれる可能性
今回の会議への参加を通じて、ESDが単なる机上の空論に留まらず、それぞれの地域や現場に根差した「血の通った実践」へと確実に進化していることを肌で感じることができました。
特に印象的だったのは、関西圏のユネスコ活動が持つ圧倒的な熱量と、多世代・多分野のプレイヤーが混ざり合うことで生まれる「化学反応」です。基調講演で語られた「当事者性」という言葉通り、参加者一人ひとりが「誰かのための課題」ではなく「自分たちの未来」としてESDを捉え、「知を交差」させている姿に強い感銘を受けました。
次世代ユネスコ国内委員会委員としての視点で見れば、今回のような実務者とユースがフラットに対話し、互いの専門性や感性を尊重し合う場こそが、今後の委員会活動においても極めて重要なモデルケースになると確信しています。
また、議論の中で浮上した「脱・成果効率主義」や「待つことの勇気」という視点は、変化の激しい現代において、腰を据えて持続可能な社会を育むための本質的な指針であると感じました。ここで得たネットワークと知見を委員会に持ち帰り、単なるイベントの実施に留まらない、有機的で持続的なユース・コミュニティの形成に向けて具体的に還元していきたいと考えています。

◾️谷垣:関西から広がるユースネットワークの熱量
私は今回の会議への参加を通して、ESDの推進に向けて各地で熱心に活動に取り組んでいるユースがこんなにも多く、また身近にいることに驚かされました。神戸は私にとってなじみの深い場所でしたが、ESDに熱心に取り組むユースと出会い、深く対話できたのは今回が初めてでした。先日大阪で開催した「第2回ローカルSDGsユースネットワーク拡大大作戦」に引き続き、関西圏でESD・SDGs活動に取り組んでいるユースのネットワークを構築・拡大することは非常に有意義であると感じ、今後も継続して取り組んでいきたいと思いました。

DATA
イベント名

第 8 回 ESD 実践研究集会(2025 年度国内 RCE 実務者・日本 RCE ユース会議)

開催日時

2026年3月20、21日(祝・金、土)

会場

神戸大学

執筆

次世代ユネスコ国内委員会委員(2026年3月現在)川上寛人、谷垣徹

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