会議の概要
UNESCOユースフォーラムは、2年に一度のユネスコ総会に合わせて開催される国際会議であり、35歳以下の若者代表が加盟国政府やユネスコ関係者と対話し、提言を行うことで、若者の声を世界の政策決定プロセスに届ける機会である。14回目となる今回は、2025年10月26日〜28日にかけて、ウズベキスタンのサマルカンドにて開催された。テーマは「気候行動とその社会的影響――特に若者に焦点(Climate Action and Social Impacts, Particularly for Young People)」であり、世界各国から選出された145名の若者代表が参加した。

UNESCOユースフォーラム1日目における各国参加者との集合写真
開催地:ウズベキスタン・サマルカンド
今回のサマルカンド開催は、1999年の創設後初めてユネスコ本部(パリ)以外で実施された。これは、平和と国際対話の推進を掲げるウズベキスタン政府の積極的な周知により実現したものである。シルクロードの要衝として、「文化の交差路」と称されるサマルカンドで、多様な背景を持つ若者たちが集まり、対話を通じて一つの提言をまとめていくプロセスは、私にとって、ユネスコの理念である「相互理解」を体言する極めて象徴的な体験となった。

ブルキナファソ代表のダヴィド・コラ氏とアイスブレイキングセッションにて
参加の背景:現場と政策をつなぐ視座
私は将来、国際連合食糧農業機関(FAO)の専門家として、農業・農村が持つ多面的機能を活かしながら、地域住民の価値観や生活文化と調和した、強靱で持続可能な農業・農村システムの構築に携わることを志している。この原点は、9歳の時に福島で経験した東日本大震災に伴う食料不足や風評被害に苦しむ農家の祖父母の姿にある。これまで大学での研究やラオスのJICA草の根技術協力事業では、村落開発普及アドバイザー、G7農業大臣会合ヤングハッカソンに参加を通じて、「地域の暮らし」と「国際的な政策議論」の双方から農業課題を捉える視座を養ってきた。こうした歩みを経て、食料不安を深刻化させる気候変動に向き合うべく、本フォーラムに臨んだ。
1日目:対話の土台づくり
初日は現地協議に先立ち、文化訪問やアイスブレイク、及び「Ship of Tolerance」コンサートが実施された。
サマルカンドの歴史的背景に触れながら、各国の参加者と互いの活動や背景を知ることができ、翌日からの議論を進めるうえでの土台を築くことができた。
2日目:気候正義の現実と調整の難しさ
2日目は、開会式及び若手気候リーダーによる全体セッション、6つの重点分野に関するワーキングセッションが行われた。午前の開会式では、若者が「Dreamers:構想する」「Do-ers:実践する」「Drivers:動かす」「Defenders:守る」という4つの主体的な役割を持つことが示された。加えて気候行動を単なる環境対策としてではなく、教育、エネルギー、文化、社会的包摂、地域知の継承などに幅広くまたがる課題として捉えるものであるとする共通枠組みが示された。午後からは、「気候ガバナンスへの若者参画」「教育のグリーン化」「持続可能な移行を支える若者イノベーション」「デジタル技術と倫理」「健康・レジリエンス・コミュニティの福祉」「文化・自然遺産と知識」の6つの重点分野を軸に、提言書と「Call to Action」の文言調整が行われた。私は、アジア太平洋地域(Asia and the Pacific =APA)の事前協議から、継続して意見の集約や論点整理を支える役割を担った。APA地域は、世界の若者の約60%が暮らす地域であり、文化も気候変動の影響も極めて多様である。そのため、同じ「レジリエンス」や「気候正義」という言葉であっても、背景にある意味や切迫感は国ごとに大きく異なっていた。私は、各参加者の前提を丁寧に確かめながら、共有可能な論点へと調整していく役割を担った。

UNESCOユースフォーラムに参加したアジア太平洋地域(Asia and the Pacific)の参加者と日本代表の筆者
特に議論の中で突きつけられたのは、太平洋島嶼国の参加者たちの言葉である。クック諸島の代表者から語られた、「海面上昇による高波での影響で塩害となり畑が枯れ、雨水も塩分を含み始めている」という現状は、私にとって研究対象であった気候変動を「将来の問題」ではなく、「今日の生存の問題」へと一変させた。こうした現場の切実な重みを受け止め、提言書と「Call to Action」の文言調整に臨んだ。
若者参画を「促進する」とするのか、「制度的に位置づける」とするのか。たった一語の違いが加盟国や関係機関に求める責任の重さを変えると感じた。そこで、各国の合意形成と提言の実効性の両方を見極め、私は事前協議で整理してきた論点を踏まえつつ、農業・農村の視点から、気候変動を技術や排出削減だけでなく、食料生産の安定、地域経済、伝統知識や文化的実践の継承と結びつけて捉える必要性について発言した。加えて、その後の追加協議では、分科会の議論へ還元することを意識しつつ、各地域の制度や人材、資金、教育といった具体的な制約条件を聞き取ることを意識した。

アジア太平洋地域(APA)の参加者と提言書(Regional Recommendations)の最終文言調整終了後の集合写真

Congress CentreのRoom XでワーキングセッションIの様子

タイ代表のキティコン・コン氏、ラオス代表のヴィエンポン・コネリー氏と会議に臨む様子
3日目:提言の採択と「パートナー」としての責任
最終日は、数ヶ月にわたる事前協議と現地での議論の集大成として、成果文書「Conclusions of the Youth Forum(43 C/INF.13)」の最終確認を行った。
採択されたこの文書では、若者を単なる政策の「受益者」や「将来の担い手」としてではなく、意思決定を共に行うパートナーとして位置づけている。具体的には、気候政策における30%以上の若者代表の確保や、ユネスコ国内委員会等への実質的な参加、さらには透明な選出過程や説明責任の指標に基づく進捗管理の提案など踏み込んだ内容が盛り込まれた。また、APA地域では、若者が依然として政策空間から排除されていることが示されている。この文書の作成現場に若者当事者として立ち会えたことは、私にとって大きな学びにつながった。採択の瞬間、会場が一体となり喜びを分かち合うとともに、この言葉をいかにして各国の具体的な政策へと実装していくかという責任感が芽生えた。
午後の「Project Café」では、5つの若者主導プロジェクトが共有され、採択されたばかりの提言をいかに現場の実践へと結びつけるかについて議論された。ワーキングセッションⅢではフォーラムの成果が共有され、その後の総会につながる形で二日間の議論が締めくくられた。

ワーキングセッションIIIでの提言とCall to Action採択の様子
総括:次なる実施への展望
フォーラム全体を通じて学んだことは、若者は「将来の担い手」にとどまらず、現在の政策形成を担う「共同決定者」であるべきだという点である。単なる「参加の機会」ではなく、実質的な「影響力を持つ参画」が必要であることを、採択までの過程を通じて実感した。
フォーラム終了後、私は提言の実施を支える15名の「フォローアップ・アクションチーム」の一員に選出された。今後は、年間の実施ロードマップの作成と進捗のモニタリング、実施状況を把握するためのトラッキング手法の検討、そしてユネスコ事務局と参加者との橋渡しをしていく役割を担っている。サマルカンドで交わされた言葉を、その場限りの熱で終わらせず、具体的な行動へと実践につなげていきたい。

閉会式の様子
DATA
| イベント名 | UNESCOユースフォーラム |
|---|---|
| 日時 | 2025年10月 26日(日)~ 28日(火) |
| 場所 | ウズベキスタン・サマルカンド |
| 執筆 | 次世代ユネスコ国内委員会委員(2026年3月現在)橋本武龍 |