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自然との共生のバトンを創る~世界のMABユース代表による対話と協働、宣言 ―第3回ユネスコ世界MABユースフォーラム(UNESCO 3rd Global MAB Youth Forum 2026)参加報告―

フォーラム概要:イタリアの5日間

2026年5月18日から22日、イタリア北部のポー・デルタ生物圏保存地域(BR)とコッリ・エウガネイBRを舞台に、第3回ユネスコ世界MABユースフォーラムが開催された。

世界MABユースフォーラムは、ユネスコの「人間と生物圏(MAB:Man and the Biosphere)計画」のもと、世界各国の生物圏保存地域(Biosphere Reserve:BR、国内通称:ユネスコエコパーク)で活動する18歳から35歳までのユース代表が一堂に会する国際会議である。

ユネスコより任命されている各国のNational MAB Youth Focal Pointをはじめ、各国や各BRを代表する約100カ国、約200名のユースが参加した。会場は2つのBRと3つの自然公園にまたがり、2州3県に及ぶ広大なフィールドである。

第3回ユネスコ世界MABユースフォーラム集合写真

フォーラムのテーマは「Committed to the Future We Want(私たちが望む未来へのコミットメント)」。ユースフォーラムとして第1回(2017年)、第2回(2019年)に続く第3回となる今回は、2025年の第5回生物圏保存地域世界大会(杭州)で採択された「杭州戦略行動計画(2026-2035)」の最初の実践の場として位置づけられていた。私は日本の綾ユネスコエコパーク、および日本のNational MAB Youth Focal Pointという2つの立場で参加した。

左:António Abreu氏(ユネスコ生態・地球科学局長 / MAB計画事務局長)/右:Liborio Stellino氏(在ユネスコ・イタリア政府代表部大使)

アジア・太平洋地域代表のラポーターとして

フォーラムに先立ち、私は世界のMABユースを代表する5名のラポーターチームへの参加要請を受けた。ヨーロッパ・北米地域(EuroMAB)、アフリカ地域(AfriMAB)、アラブ地域(ArabMAB)、ラテンアメリカ・カリブ地域(IberoMAB)の各地域の代表とともに、私はアジア・太平洋地域(AspacMAB)を代表するメンバーとして選出された。ラポーターチームの役割は、約200名の参加者による数日間の議論を記録・統合し、2つの成果物にまとめることだった。ひとつは世界のMABユースの声を反映した「宣言文書」、もうひとつは杭州戦略行動計画と連動する「ロードマップ」である。

ラポーターチーム

参加者交流と開会式

初日はロゾリーナ・マーレのコングレスセンターで、ユネスコMAB事務局による「MABユース・マッピング調査(2025)」の結果報告が行われた。続く学習セッションでは、60%以上の加盟国がNational MAB Youth Focal Pointを指定済みというデータが示され、制度的参画の前進を示す一方、地域間の温度差も浮き彫りとなった。午後にはアドリア市立劇場で開会式が行われ、イタリア外務省やユネスコ本部、地方政府など多数の関係者が出席する中、私はこのフォーラムが持つ国際的な重要性を強く実感した。

Ludovica Ramella氏(イタリアNational MAB Youth Focal Point)とイタリアMABユース

異なるフィールドでのテーマ別グループ議論

2日目から4日目は、言語別(英語・フランス語・スペイン語)5つの大グループと、8〜10名の小ワーキンググループに分かれ、毎日異なる会場を巡りながら議論を深めた。プログラムは、午前にテーマ別議論とグローバルMABユースネットワークのガバナンス議論を行い、午後にフィールドトリップへ赴くという構成で3日間展開された。

  • 5月19日(2日目):ポー・デルタBR(エミリア=ロマーニャ州)の5拠点を舞台に「気候変動・生物多様性保全・環境意識と行動」をテーマに議論を交わした。湿地生態系やフラミンゴ保全の現場を訪れた後、夜はコマッキオのマリナーティ工房で、DJを交えた夕食会に出席し、参加者同士の親睦を深めた。
  • 5月20日(3日目):コッリ・エウガネイBR(ヴェネト州)に移動し「経済と持続可能な生計(農業・観光・ブルー&グリーンエコノミー)」について議論を交わした。歴史ある修道院や温泉施設を会場に、若者世代が地域に貢献できる経済活動のあり方について議論を深め、夜は「バオーネの青豆フェスティバル」で地域の食文化を体感した。
  • 5月21日(4日目):ポー・デルタBR(ヴェネト州)で「文化・伝統知識・言語」をテーマに議論を深めた。サイクリングやボートによるフィールドトリップに続き、夜は「ムール貝フェスティバル」で地元の漁業文化と食に触れた。

テーマ別グループ議論の様子(コマッキオ)

ポー・デルタBiosphere Reserve(フラミンゴの飛来)

宣言文書を紡いだ舞台裏

3日間の通常のプログラムと並行して、ラポーターチームは宣言文書のドラフト作業を継続した。宣言文書は最終的に「ガバナンス(議決権を含む正式な参画)」「資源・資金(ユース主導活動への投資)」「気候・生物多様性(地域主導の適応策と権利に基づくアプローチ)」「伝統知識・文化(科学的知見との同等の尊重)」「教育・知識へのアクセス(能力開発と情報公開)」の5つの柱で構成された。

ラポーターとしての活動は、私にとって極めてチャレンジングな経験であった。宣言文書の作成においては、表現のニュアンスや文言の粒度を慎重かつ適切に調整し、多様なバックグラウンドを持つ参加者や各国の状況に配慮した言葉選びが求められた。野心的な提言を盛り込みながらも、外交的な文書としてまとめる必要があり、参加者から寄せられた膨大な意見や文章を整理・要約する作業には、並外れた集中力と責任感、そして多大な労力を要した。私たちは、何杯ものエスプレッソを飲みながら作業にあたった。こうして、文書作成は深夜まで及び、十分な食事や休息の時間も限られる中、移動中の車内においても編集作業が継続された。特に4日目はフィールドトリップに参加することなく、宣言文書の完成に向けて終日テーブルに向かい、食事も作業の合間に済ませながら一心に編集作業に取り組んだ。

宣言文書の編集過程(ラポーターチーム)

未来への宣言、MABユースが創ったもの

5日目の朝、ドラフトをプロジェクターに映しながら全参加者でフィードバックを行うプレナリーが開かれた。修正意見を受けてリアルタイムで文章を更新するこの作業は、宣言文書が参加者全員のものであることを確認する時間だった。閉会式直前のバスの中まで最終調整は続いたものの、多様なバックグラウンドを持つラポーターたちとの対話を通じて、文書には深い奥行きと視点の多様性がもたらされた。チームの仲間やユネスコ事務局、そして参加者の協力と信頼に支えられ、無事に宣言文書を完成させることができた。

宣言文書の最終確認と全体フィードバックの様子

閉会式は、コッリ・エウガネイBRのアバノ・テルメにある中世の修道院の回廊「キオストロ・ディ・モンテオルトーネ」で行われた。私を含め5人のラポーターがMABユースを代表して宣言文書を読み上げ、省庁代表、地方政府、およびユネスコ代表から今後への高い期待が示された。

閉会式にて宣言文書を読み上げる様子

宣言文の末章には「私たちはBRの未来を受け継ぐのを待っているのではなく、すでにその未来を形づくっている」と記された。これは、フォーラム全体を貫く確信を端的に言い表していた。ロードマップについては、今後ラポーターチームを中心に取りまとめられ、世界のMABユースによる意見募集を経て最終化される。また、宣言文書はユネスコによるテクニカルな修正を経て、正式発表される予定である。

閉会式後の集合写真

日本への展開

5日間を終えて率直に思ったこと、それは世界中に同じ方向を向いて活動している仲間が存在するということだった。言語も文化も背景も違うなかで、自然や地域と向き合う意志に確かなつながりを感じた。そして、日本にも志を同じくする若者たちが数多く存在しているのだと、改めて確信した。私は今後も実践を共有するなかで、出会う仲間とモチベーションを高め合い、次世代へのバトンを繋いでいきたい。そのために、若者たちが学び、挑戦し、地域の現場で主体的に活動できるよう、学習機会の充実や参画の場の確保、多様な主体との連携・協力による制度づくりを進める。若者が現場で活躍し、その成果が次の若者を呼び込む。それがいま、世界が求めるネイチャーポジティブの実現に向けた持続的な一歩になると感じている。

同時に、MAB計画においてはユネスコエコパークの理念を軸に、地域の歩みを支える国の政策や仕組みが必須であると考える。世界中の仲間と紡いだビジョンや宣言を、MAB施策や国の政策に反映させ、ユネスコエコパークの確実な未来を創っていく。私はこのネットワークが、その原動力となると確信している。

アジア・太平洋地域(ASPAC)のMABユースの集合写真

DATA
イベント名

UNESCO 3rd Global MAB Youth Forum 2026

日時

2026年5月18日(月)〜22日(金)

場所

イタリア
ポー・デルタBiosphere Reserve(ユネスコエコパーク)
コッリ・エウガネイBiosphere Reserve(ユネスコエコパーク)

執筆

次世代ユネスコ国内委員会委員 /
National MAB Youth Focal Point for Japan(ユネスコMAB計画)
門田朔(2026年6月現在)

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