(前編より続く)
前編では、地球規模の課題意識から臼杵の食文化に流れる哲学を紐解き、映画『100年ごはん』が参加者の心に灯した火についてお伝えしました。
後編では、その灯火を囲み、世代を超えて交わされた対話の様子を紹介します。1枚の模造紙の上に、異なる世代の言葉が交差しながら、臼杵の食文化の新たな価値が「創造」されていった記録です。
言葉を味わい、世代を味わう〜対話から生まれた二重の循環〜
ワークショップでは、「臼杵の食文化の魅力とは?」という問いを投げかけました。

臼杵食文化ユースサミットスライド
この問いに対し、参加者はまず、自らの言葉をポストイットに書き出し、それらを模造紙の上に持ち寄り、グループで対話を重ねながら、言葉同士の関係性を探っていきました。KJ法を用いたこの作業は、まさに文化が創造されていく過程の縮図のようでした。真摯な眼差しで思考を巡らせ、対話を重ねる参加者の様子は、「学ぶ側」から、文化の未来をつくる「担い手」へと変容していく尊い瞬間でした。
![]() |
![]() |
グループワークの様子
対話の中で特に興味深かったのは、ユース世代と大人世代の「循環」というキーワードへの捉え方が明確に異なっていた点です。
- ユースの視点―地球規模で捉える「資源の循環」
中高生の皆さんからは、森の間伐、堆肥、土、野菜、そして水といった、マテリアルな「資源の循環」に着目した意見が多く出されました。ある生徒は、「土づくりセンターによって、自然と人の双方の健康、豊かさを目指す『プラネタリーヘルス』を実践している」と、現代的な概念を用いて的確に臼杵の取り組みを表現していました。臼杵の食文化を地球環境という大きなシステムの中に位置づけ、その持続可能性を科学的かつグローバルな視点で捉えている姿が印象的でした。

ユースメンバーが作成した模造紙
- 大人の視点―人々の想いが紡ぐ「人材と知恵の循環」
一方、先生方をはじめとする大人世代は、「臼杵の食文化は、ただ食を学ぶだけでなく、生き方を学ぶキャリア教育になる」、また「臼杵には次世代のことを真剣に考えている食文化の担い手が多くいる」など、先人たちの知恵や技術、地域を誇る心を次世代へと受け継ぐ「想いと人材の循環」に着目していました。このように、大人世代が文化を人の営みそのものとして捉え、無形の価値の教育的・精神的な継承のプロセスに光を当てている点が印象的でした。

先生方が作成した模造紙
この二つの視点は、決して対立するものではありません。むしろ、文化が未来永劫にわたって継承されるために不可欠な両輪であると言えます。自然科学的な「資源の循環」と、人文学的な「想いと人材の循環」の2つが交差し、統合される点にこそ、臼杵の食文化の奥深さと、これからの発展の可能性が秘められていると感じました。この発見は、参加者との対話の中から生まれた、本サミットにおける何よりの成果となりました。

同じ恵みを味わうということ
思索を深めた後は、臼杵の豊かな食材をふんだんに使ったお弁当を囲んで昼食会を開きました。この時間は、当初の企画にはありませんでしたが、「五感で臼杵の食を体験してほしい」という市の担当者である松下さんの温かな提案によって実現したものです。結果として、この時間がサミットに、より臼杵らしい彩りを添えてくれたように思います。

安心院産米で臼杵黄飯、カボス塩麹漬け臼杵ん地魚フライ、臼杵産エソの手作り天ぷら、鯵の南蛮漬け、ゴーヤちゃん漬け、冬瓜の煮物、コリンキーナムル、とり天&ロロン南瓜の天ぷら
学校も世代も異なる参加者が一つの食卓を囲むことで、穏やかな対話の輪が広がりました。あるテーブルでは自分たちの学校での食文化に関する取り組みが共有され、また別のテーブルでは臼杵市立西中学校の卒業生と在校生が「学校林」という長期にわたる森づくりの活動について、世代を超えて語り合う姿が見られました。
学び、語り合い、そして共に味わう。この一連の体験が、参加者の学びをより深く、身体的な実感の伴ったものにしてくれたのではないかと思います。
そして、対話は未来の食卓へ続いていく
サミットの最後には、参加者それぞれがアンケートに決意を寄せてくれました。その言葉は、もはや「消費者」や「生徒」を超えていくものでした。

「ユースサミットを通じて、臼杵市がユネスコ食文化創造都市であるにも関わらず、市民がその良さを知れていない現状を変えていきたいと改めて感じました」
「臼杵市全体のシビックプライドを醸成するために、体験の場をつくっていきたい。そのために、今回のような場の設営を手伝うなど、できることをしていきたいなと思いました」
「臼杵の土づくりの活動を世界に広め、土の疲弊を回復させてみたい」
これらは、地域の未来を自分ごととして捉える、まさに「文化の創造者」としての力強い宣言です。ユース世代が、これほどの情熱と当事者意識を秘めているという事実こそ、地域にとっての最も価値ある資源であると、改めて気づかされました。
私たちは今回の成果と課題をもとに、全国で活用可能な「ワークショップのひな形」を構築し、日本各地のユネスコ創造都市に暮らすユースにも同様の体験を広げていきたいと考えています。
地域がもつ独自の価値を、次世代がいかに発見し、磨き上げていくか。臼杵での実践は、そのための確かな一歩となりました。
DATA
| イベント名 | 臼杵食文化ユースサミット |
|---|---|
| 開催日時 | 2025年9月14日(日) |
| 会場 | 臼杵観光交流プラザ 3階 大会議室 |
| 企画 | 次世代ユネスコ国内委員会 |
| 共催 | 臼杵食文化創造都市推進協議会 |
| 執筆 | 次世代ユネスコ国内委員会 委員(2025年10月現在) 佐藤世壱 |

